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第13回:“消えた導入事例”のナゾを追え!
導入事例を読むワザ・作るワザ
導入事例を読むワザ・作るワザ(第13回)

“消えた導入事例”のナゾを追え!

記憶を頼りに、以前に見かけた導入事例の記事やPDFを、Webサイトで探しても見つからないことがある。極端な場合には、先週Webで読んだ導入事例が消えていることもある。

いつの日か顧客は商品を買い替える。導入事例の記事をWebから取り下げたり、紙やPDFのカタログの配布をやめる最大の理由はこれだ。多くの良心的な企業は、利用をやめた顧客の情報を導入事例として使うのは好ましくないと考えている。

導入事例の読み手なら、なぜ導入事例が消えたのかを調べると、一段と深く商品を比較検討できる。

企業では、新しい機器やソフト/サービスに買い替えながら使い続ける方が圧倒的に多い。必要が無くなり、買い替えることなく廃棄したようにみえることもあるが、同じ機能を果たす別カテゴリーの商品に買い替えていることの方が多い。オフコンや会計専用機が、サーバとERP/財務会計ソフトに移行した例がわかりやすいだろう。

つまり、紹介している企業が後継商品に買い替えたので、旧商品の導入事例を消した可能性がいちばん高いのだ。同じ会社の新製品に更新したのかもしれない。なかには、後継商品の商談に負けて、競合する商品に乗り換えられてしまったので、導入事例を取り下げざるを得なかったのかもしれない。ごくまれには、その商品の利用に関わるトラブルが起こり取り下げたという場合もある。

導入事例が消えたことで、通常は表に出てくることが少ないこうした事情を外部の人が知ることができる。競合商品の中からどれを採用すべきか検討しているときなら、ぜひ知っておきたいことと言えるだろう。手軽に調べる程度ならだれにでもできる。

まずは、消えた導入事例の会社のWebサイトを見たり検索エンジンを使って調べる。規模の大きな商談の場合、導入する前の段階でニュースリリースを発表していることがある。ライバル企業が乗り換えを勝ち取ったのなら、いちはやく導入事例を作って公開していることもある。重大なトラブルの場合、お詫びの発表やニュース報道が見つかることもある。

営業担当者を呼んで商品の検討が進んでいのなら、その会社と競合会社のすべてに、導入事例が消えた理由を尋ねてみるとよい。競合会社が「うちの商品を採用していだきました」とか、当事者以外の担当者が“うれしそうに”情報を教えてくれることもある。

次に、その会社がなぜ買い替えたのかを考えてみる。消えた導入事例に書いてあった、その会社が採用したメリットを思い出してみよう。メリットをもっと生かせる新商品を見つけて移行したのかもしれない。書いていないデメリットに不満を募らせて乗り換えたのかもしれない。これらを検討すれば、採用後に「しまった」と思う失敗を減らすことができる。

ということで、商品の検討をするときは、導入事例の記事は消える前提で作業を進めた方がよい。導入事例を見つけたら、URLをメモするのではなく、WebページやPDFをパソコンにファイルとして保存したり印刷する。検討の期間が長くかかる場合には、例えば3か月ごとに競合商品のWebサイトを見て、消えた導入事例と追加された導入事例をチェックするといった具合だ。

導入事例を作る立場なら、購入からあまり期間のたっていない顧客を取り上げて導入事例カタログなどを作る方が有利ということになる。買い替えの時期が1年以内に迫っているような顧客の導入事例を作るのは損である。

なお、競合会社の中に激しい競争を好む営業担当者がいる場合、他社が導入事例で取り上げた企業をねらい撃ちしてリプレース営業を仕掛けることもある。意地になって取りに行くようなやり方は、当人にも顧客にもメリットは少ないが、このことに気が付かない営業担当者がいる。こうした横やりにも負けないだけの、商品メリットの向上と顧客と信頼感の醸成は欠かせない。
(続く)

著:須藤慎一(すどう・しんいち)
IT事業プランナー/ライター
技術系の商品や技術そのものを“解き明かす”仕事が中心。マーケターとして商品コンセプトを磨き販促ツールを取りそろえ、ライターとして文字で表現することが多い。

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